野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

そろそろ「2010年代の50冊」についても

『サピエンス全史』の下巻。

宗教、科学、資本主義、国家、といったビッグなキーワードで、人類の歴史を振り返る。
認知革命、農業革命の次に起こったのが科学革命だ。科学の発展というのは、自身が無知であると認めることから始まる、という指摘は興味深い。そして、科学と帝国、資本主義との関係。科学の発達にはスポンサーが必要、というのは何も今に始まった話ではなく、最初からそうだった、というわけだ。だから、実は帝国主義と科学とのつながりはけっこう強い。昔よりも戦争のコストは上がっており、また、勝つことで得られるリターンも少なくなっていることから、現代の帝国主義は昔と違ったものになってきている。というのは、佐藤優氏もどっかで同じようなことを書いてたな。
そして最後の、「超ホモ・サピエンス」の章には、仰天するような話がいろいろ。SFの中だけと思っていたようなことが、どんどん現実になっているのだな。考えてみれば、サイボーグってのは眼鏡とか入れ歯の延長線上にあるんだよな。
まあそんなこんなで、我々が当たり前だと思っていることってのは、タイムスケールを思い切り広げたり、客観的に突き放して見たり、極端にマクロに考えてみると、また違った見方が出てくるものだということを思い知らされる面白い本だった。内容の割には読みやすいし、そりゃ皆さん絶賛するのもよくわかる。「ゼロ年代の50冊」で1位になった『銃・病原菌・鉄』に負けず劣らずのスケールのデカさだが、その当人であるジャレド・ダイアモンドも推薦してますからね。