今年『十二国記』シリーズの新作が出る、と聞いたのでせっせと読み直しつつ記憶をリフレッシュしていたが一向に出てくる気配がない。何だよそれ出る出る詐欺かよ、と文句言いつつ旧作を読み進めるのはホールドしていたわけだが、いよいよ10/12にリリース、という具体的な情報が入ってきたので、慌ててリフレッシュを再開した。というわけで『図南の翼』。
- 作者: 小野不由美,山田章博
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1996/02/05
- メディア: 文庫
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先王が斃れて27年。王が不在のため国は荒廃するばかり、というなかで、誰も王にならないのなら、私がなる!と12歳のお嬢様が言い出すという設定。そんなアホな、というところだが、先述の通り前作にて彼女がいずれ王になることはすでにネタバレしている。ではどうやって王になったのだ、という、いわば犯人はすでにみんなわかっているのだけど、どういうロジックで追い詰めてそのアリバイを崩していくのか的な話。そしてまた、この長大なサーガは、それぞれのエピソードの中で十二国記ワールドの構成要素を少しずつ解説していくような作りになっている。王になろうとするものは「麒麟」に選ばれるために「蓬山」を目指して「黄海」を超える過酷な旅をしなければならない。今回はこのあたりの話が中心となる。
十二国記シリーズを読み直すと、いずれのエピソードにも何かしら政治哲学的な問いが含まれているように感じられる。珠晶のノブレス・オブリージュ的な責任感と恤民の心は大変に結構なのだけども、やはりどうしても12歳のガキだとどうしても、いやいやわかってねーなアンタ、みたいなところもある。その辺を、妖獣を狩るのを生業とし、十二国記世界における不可触民的な位置にいる頑丘との黄海の辺境における珍道中で学び、王たるものとしてふさわしくなっていく。というような話でもあるよねこれは。
12歳のお嬢様が王になる、なんてのはファンタジーの中での話にすぎないかもしれないけど、国連で怒りのスピーチをしているのが16歳の少女だからって決して侮れない、てのはみなさんご案内のことでね。これから世界はどのように変わっていくのでございましょうか。