先日から読み続けている「ローマ人の物語」文庫の最新刊、「ローマ人の物語〈25〉賢帝の世紀〈中〉 (新潮文庫)」が終了。
- 作者: 塩野七生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/08
- メディア: 文庫
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主役は、トライアヌスの跡を継ぐ賢帝ハドリアヌス。この人も後に五賢帝の一人に加えられるほどに非常に評判が良かったわけだが、先帝トライアヌスの重臣4名が反ハドリアヌスの陰謀をめぐらしているのを察知し、さっそく粛清してしまったことに関して作者は、
君主ないしリーダーのモラルと、個人のモラルはちがうのである。一私人ならば、誠実、正直、実直、清廉は、立派に徳でありえる。だが、公人となると、しかも公人のうちでも最高責任者となると、これらの徳を守りきれるとはかぎらない。ラテン語では同じく「ヴィルトゥス」(virtus)だが、私人ならば「徳」と訳せても、公人となると「器量」と訳したのでは充分ではない場合が少なくなく、しばしば「力量」と訳さざるをえなくなるのである。
と書いている。うーむなるほど。
ローマ軍の基地にある貯蔵される食糧と兵器に関して、必要以上に補充しすぎると腐ったり錆び付いたりして無駄になる。したがって必要最低限の在庫をキープするために、ハドリアヌスは軍団基地と兵糧の供給地を結ぶ補給路の組織化をすすめたのだそうな。要するに、流通を保証し、つねに「適正在庫」をもつことで無駄な経費を使わなくて済むようにしたわけだ。「ローマ人は兵站で勝つ」と言われたそうだが、兵站=ロジスティクスとは、現代では「物流」のことだもんな。
また、防衛体制を確立するにあたっては、むやみに軍団兵を増員するのではなく、防衛線の付近の土地に済む属州民から志願者を募り、「ヌメルス」というパートタイムの補助兵の組織を作り出した。これは言ってみれば、正従業員を多く雇って固定費を増やすのでなく、派遣社員やアルバイトで一時的に不足する労働力を補う、というような感じなのだろう。
といったような感じで、ハドリアヌスってのはなんだか現代の経営者みたいな皇帝だったのだな。