野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

別に眠れぬ夜でなくても

内田樹という名前は見聞きしたことがあるが未だその著書は読んだ事が無かった。
今回R文庫にて「疲れすぎて眠れぬ夜のために」を読んだ。

疲れすぎて眠れぬ夜のために (角川文庫)

疲れすぎて眠れぬ夜のために (角川文庫)


なんと面白い本か。色んなことが書かれているが、基本的な主張は、「まあ、あんまり無理しなさんな」ということらしい。
本当に、色々と面白い話があるのだが、そのなかでひとつ「おおっ」と思ったのは、弁護士と精神科医は老け込むのが早い、という話。不愉快な人間関係を耐えることは生命エネルギーを枯渇させるから我慢しすぎない方が良い、弁護士や精神科医というのは人の話を黙って聴く事が仕事だからどんどん生命エネルギーが消耗されるのだ、というわけだ。特に弁護士なんかは「なんだか、こいつ真犯人みたいだなあ」と内心思っていても職業上その人の話を信じないといけない、と書いている。これはまさに、瀬戸内海のどっかで長寿のばあちゃんが言ってる「長生きの秘訣は嘘をつかないことと人の話を聴かないこと」(2月29日のエントリ参照)ていうのと一致するじゃないか。
内田氏はWebサイトを持っていて、彼の著書のいくつからそのコンテンツを編集し直したものだそうだ。つまりその内容はすでにどこかで書かれていることなのだけど、やっぱり本になれば多くの読者はわざわざ買うわけだ。これについてこう書いている

ある著者の「愛読者」というのは、その人の「新しい話」を読みたくて本を買うわけじゃない。むしろ「同じ話」を読みたくて本を買うんだと思います。

あーなるほどね、それって落語なんかと一緒よね、と思ったらすぐ後に

志ん生の落語を聴きに来る人は、「前に聴いたのと同じの」を聴きに来るわけです。「まくら」が同じだと言って喜び、「オチ」が同じだと言って喜ぶ。そういうものですよね。

ときた。電車で読んでて、思わず「うーん」と唸ってしまった。まあたぶん誰にも聞こえてないだろう。実際、吉本新喜劇にしてもそうだし、音楽だって同じよね。ロバートジョンソンだってライトニンホプキンスだって、みんなほとんど一緒だもんな。

ということで本日、本を買いにいったときに最新刊の「街場の現代思想」を買ってきたとですよ。