最近、ポール・クルーグマンの著作が続々と文庫化されている。以前、彼の「グローバル経済を動かす愚かな人々」を読んでみたことがあるが、あれは素人にはちとキツいな。そう思ったので、「自己組織化の経済学」はなんだか面白そうだなと思いながらも手を出せずにいた。で今回めでたく文庫化の運びとなったので、ひとつ勝負に出てみたわけだ。
うーん、やっぱりちょいとキツいな。複雑系とか自己組織化そのものについてなら、その手の本を読んだ方が良い。クルーグマン教授いわく、複雑系の科学は経済学にも応用可能であるが、それが今まで正しくなされた事例がない(ブライアン・アーサーのあれは違うのか?)。だから自分がやってみよう、ということらしい。ふーん。それはまあ大変に結構なことだろうが、正直言ってあんまりよくわかりませんぜ。原因としてはもちろんこの俺様の知性の不調というのがまず考えられるのだが、なんかこう、本当に説明が必要なところを端折ってないか?どこがどうなのかよくわからんけど。カウフマンの本もたいがい難しいけど、あっちの方がまだわかりやすい気がするぞ。例によって、ひょっとして翻訳に問題があるのでは、という疑いがあるのだ、俺様の知性の不調は棚に上げて。145ページに以下のような記述がある。
もしλ(x)を長さLの線に沿って起こるゆらぎであると考えると、周波数がゼロ(平均値λにおける水平線)の規則的なサイン曲線である2π/L、4π/L、6π/L等々に分解できるのである。
意味がわかりません。周波数がゼロのサイン曲線って何だ?普通に考えれば、「(周波数がゼロである)平均値λの水平線と、周波数が2π/L、4π/L、6π/L等々である規則的なサイン曲線に分解できる」が正解ではないかと思うのだがいかがか。これはクルーグマンがそのように書いたという可能性を否定は出来ない。しかしながら、いわゆるところの誤訳であると考えるのが自然ではないだろうか。こういうのが一箇所あっただけで、全体の信頼度ががくっと落ちるのだ。俺様の知性の不調は棚に上げて。