うわぶっといなあと手に取って軽くビビりながら「戦争の世紀を超えて」を読んだ。「その場所で語られるべき戦争の記憶がある」というサブタイトルのとおり、ポーランドのイエドヴァブネを始めとし、アウシュヴィッツ、38度線、ヒロシマなど20世紀の戦争や虐殺と関わりのある場所を訪ねて行きながら姜尚中と森達也が対談するという本だ。
戦争の世紀を超えて その場所で語られるべき戦争の記憶がある (集英社文庫)
- 作者: 森達也,姜尚中
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2010/02/19
- メディア: 文庫
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世界中見渡して、戦争や虐殺に無関係でいられた国なんて無いんじゃないか。そんな気がしてくる。で、なんでそんなことになるのかを二人で語り合うのだが、これが実にヘヴィでハードコアな内容だ。「思考停止してんじゃねえぞこの野郎」とどやしつけられたような気分。森達也のアナーキーなまでの問題意識と姜尚中のクールな知性でドライブされる対話が、とてもスリリングだ。
ハンナ・アーレントは「わかりやすいお話はまず疑ってかかれ」と言ったらしい。いや言ってないか。アーレントの解説本にそんなことが書いてあっただけか。適当なことを書いちゃいかんな俺様。まとにかく、何でもかんでも例えば善悪二元論みたいなわかりやすい物語に回収して理解することは、楽で良いけども、時にすごく危険なことなんだ。
野原ひろし(クレヨンしんちゃんのパパ)はこう言ったらしい
正義の反対は悪なんかじゃないんだ。
正義の反対は「また別の正義」なんだよ。
この本で言っていることは、まさにひろしの言っていることと同じなんだと思う。これがわかっていないと危ない。戦争を起こすのは邪悪な人間じゃない。人間はそこまで邪悪に徹しきれるほど強くない。戦争や虐殺を駆動しているものの根底には「正義」がある。イノセンスと暴力は直結しているのだ。
Give peace a chance...