野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

すぐ影響されるんだから

村上春樹の小説では、人々はやたらとビールを飲む。とても美味そうに。そして、ビールの次によく飲むのが、ウィスキーだ。
わたくし自身は、ウィスキーはあんまり飲まない。まあ、一昨年ぐらいから大ブレイクしてどこの居酒屋でも飲める「ハイボール」はぼちぼち飲むけど。ああいうのではなくて、シングルモルトのウィスキーを、その「聖地」アイルランドとスコットランドを旅しながら飲み倒してきました、というエッセイが「もし僕らの言葉がウィスキーであったなら」だ。

もし僕らのことばがウィスキーであったなら (新潮文庫)

もし僕らのことばがウィスキーであったなら (新潮文庫)


なぜ「もし僕らの言葉が…」かというと、シングルモルトウィスキーの味を言葉では説明しきれないから。言葉ではわからない、とにかく「飲めばわかる」ということだ。ふーむなるほど。と言いながらも、村上さんのいつもの調子で色々と説明してくれるわけだが、

たしかにラフロイグには、まぎれもないラフロイグの味がした。10年ものには10年ものの頑固な味があり、15年ものには15年ものの頑固な味があった。どちらも個性的で、おもねったところはない。文章でいえば、たとえばアーネスト・ヘミングウェイの初期の作品に見られるような、切れ込みのある文体だ。華麗な文体ではないし、むずかしい言葉も使っていないが、真実のひとつの側面を確実に切り取っている。誰の真似もしていない。作り手の顔がくっきりと見える。音楽でいうならば、ジョニー・グリフィンの入ったセロニアス・モンクのカルテット。15年ものは、ジョン・コルトレーンの入ったセロニアス・モンクのカルテットに近いかもしれない。どっちも捨てがたく素敵だ。そのときどきの気分で好みがわかれるだけだ。
(p.62より)

うーん。ま、村上さんがシングルモルトのウィスキーがとても好きだということはよくわかった。
ちなみにこの本を読んだあと、なんばに出かける用事があったので、高島屋の酒売場でアイラ・ウィスキーを試飲した。おお、確かにこれは美味かも知れない。だけど一本が平気で何万円もするような酒をこの俺様が買うわけがない。ごめんね、試飲を勧めてくれたおねいさん。