野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

やっぱりまずは食いもんの確保

やっと「銃・病原菌・鉄」を読み終わった。大作ですな。ほぼまるまる一ヶ月かかってしまった。

銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎


人類の1万3000年の歴史において、なぜユーラシア大陸の住民たちは、アフリカ、オーストラリア、アメリカそれぞれの大陸を侵略し先住民を支配あるいは駆逐してしまうことができたのか。
キーは「余剰食糧の確保」らしい。余剰食糧を確保することにより、「食料生産に直接携わらないけれども共同体を管理あるいは指導していく階層」が存在することが可能になる。これがすなわち政治機構であり、たとえば統制の取れた軍隊をもつことにつながる。
では彼らが余剰食糧を確保することを可能にした要因は何か。それはそれぞれの大陸の大きさであり、形(南北に長いか、あるいは東西に広がっているか)であり、そこに住む野生動物や植物の種類である… てな話だ。スケールでかいぞ。
歴史を考えるのに、科学的な方法論を適用し、ありとあらゆる学問の成果を活用する。そんな本だ。
この本は、ヨーロッパの各国が「新世界」を求めて他の大陸を侵略していったことについて、それは単なる事実として、なぜその企てがうまく行ったのか、について考えている。侵略行為が良いとか悪いとか言っているわけではない。それは別次元の話だ。
そして発達した文明を持つ人間は、他の共同体に対して必ずこのような侵略行為を行うように宿命づけられているのか、そんなことについて考えているわけでもない。
この本をゼロ年代の傑作に入れることに異論はない。だけど上記のような疑問に対しては、誰が答えてくれるのだろう。