ハリウッド映画なんかを観ていると、あの字幕の翻訳にはいつも感心させられる。特にダジャレとか語呂合わせみたいなセリフのとき。よくまああんな翻訳ができるもんだと思うのだが、やはりあれは超絶的に高難度の職人技であるようだ。
以前から書店で「ガセネッタ&シモネッタ」などというふざけたタイトルの本を見かけて、ずっと気になっていたのだが、このたびついに読んでみることになった。
- 作者: 米原万里
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/06
- メディア: 文庫
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著者の米原万里さんの本業は、ロシア語の同時通訳である。話し言葉をリアルタイムで翻訳していくなんて、とても人間業とは思えない。当然、日頃からの研鑽を怠らないわけだが、それでもなお、同時通訳の現場においてはとてつもなくスリリングな事件が起こりまくっているようで、その数々のエピソードはもう、抱腹絶倒なんである。
言葉を使うことを生業とし、日々言葉と格闘している者のみが到達できる高みがある。そこに立って初めて見ることのできる言葉というものの姿についての捉え方は、時に衝撃的であったり、あるいは深く納得させられたり。まことに含蓄にとんだエッセイである。
こんな面白い本を今まで手にとってもみなかったというのは不覚という他ない。