野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

なあなあの説

だいぶ前から、「神去なあなあ日常」という小説を新聞の広告で見て気になっていた。高校を卒業したばかりの若者が、さる事情により三重県の山奥にある過疎の村に送り込まれ林業を始める、というような内容だ。この本がついに文庫になった。

神去なあなあ日常 (徳間文庫)

神去なあなあ日常 (徳間文庫)


タイトルにある「なあなあ」というのは、まあスワヒリ語でいうところのポレポレですな。ぼちぼちいこか、というぐらいの意味なのだそうだ。何事も結局は「なあなあや」ですます人々。それぐらいレイドバックな山奥の村を舞台にした物語だ。いや、そもそも神去村なんて実在するのか?一応フィクションということになっているけど、どこかモデルになった村があるんだろうなあ。
林業っていうのは、相当に長いタイムスケールの中で物事を考えていくことになる。だからどうしても、レイドバックで「なあなあ」になるんだろう。この「なあなあ」の中に、自然は人間にはコントロールできるものではないとか、ピュシスからの贈与とかそういう思想が組み込まれている気がする。自然に対してあまり逆らわない、というのは谷崎潤一郎が「陰翳礼讃」において「懶惰」という言葉で表した、日本人的なメンタリティなのだろう、きっと。
それにしてもこの三浦しをんという人、スゴいなやっぱり。エッセイなんかを読むと、妄想狂の変態としか思えないのだが、こういう「プロフェッショナルの仕事」みたいな話を書くと絶品ですなぁ。早く「船を編む」の文庫が出ないかなと待ち焦がれる今日この頃である。