数年前に初めて手にした時に、最初の数ページですっかりその怪しい魅力の虜になってしまった「ねにもつタイプ」。その続編が出たというのだからこれはもちろん読まないわけにはいかない。「なんらかの事情」。もうこのタイトルだけで、すっかりヤラれてしまう。
- 作者: 岸本佐知子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/11/08
- メディア: 単行本
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レジでは必ず一番遅い列に並んでしまう。(「才能」)
会社員だったころ、あまりに失敗ばかりするので、社内における失敗の単位が「キシモト」になってしまった。(「レモンの気持ち」)
「サーファーカットの人」になるため、自分でブロウをするのだがどうやってもうまくいかず、ファラ・フォーセットになるはずが、毎日長時間ドライヤーの熱にさらしたため髪がゴワゴワに傷んで日本史の教科書で見た「検非違使」になってしまった。(「ファラの呪い」)
こんな話を、実にクールな文体で淡々と語る。たまらん。
耳。ひらがな。ジャムの空き瓶。こんなありふれたものたちをネタに、果てしなく妄想の世界をふくらませて行く。
アロマテラピー、ジャム作り、フラワーアレンジメント、ハーブ、などに耽溺していると、ある日突然「ごわす様」が現れ、それらの素敵生活を「ごわす化」、つまり無効で意味の無いものにしてしまう。「ごわす様」には「ごんす」「がんす」「やんす」「でげす」などの仲間がおり、アロマテラピーのごわす化の前には、ハーブ生活をでげす化されたこともあるらしい。
なんだそりゃ。
ま、とにかく頭から尻尾の先までこんな調子だ。ほんとクセになる。やめられまへんな。