野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

ボルヘス恐るべし

ボルヘスの小説ってのは、なんだかわけがわからない。でも妙に気になって、読まずにはいられない。
そんなわけで、前から気になっていた「伝奇集」。

伝奇集 (岩波文庫)

伝奇集 (岩波文庫)

いやまったく、胡散臭いことこの上ない。読んでいると、なんだか現実世界に対する遠近感がおかしくなる。最初はまともに意味を取りながらストーリーを理解しようとしたのだが、行きつ戻りつしながら、さっぱり前へ進まない。二重否定を濫用したあの文章とシュールすぎる物語は、ストレートに何かを伝えることを拒否しているとしか思えない。途中であきらめて読み流すようにした途端に、独特の異様な世界が立ち上がる。読者を迷宮に追い込み、そこでやっと何かがぼんやりと像を結び始める。全編これミスティフィカシオンとペダンティズムにまみれた、でもこの感じは嫌いじゃない。
ほら、こんなものを読んでいると、その感想までがなんだかよくわからないことになってくる。なんだかラテンアメリカ文学っていうのは、ある種の呪術性を含んでいるんじゃないかと思えてくるのだな。