タイトルは「恋愛小説集」?岸本さんにしちゃ何だかネムいことしてんなぁ、と思ってよく見たら「変愛小説集」だった。いや、さすが。
前の「居心地の悪い部屋」のときも思ったのだけど、よくもまあ、これだけ怪体な話ばかりを集めてこられるものだと感心する。とにかくパラノイアとフェティシズムとオブセッションのごった煮、とでも申しましょうか。でも、だからこそ、その中から、純粋な愛というものの形が見えてくるのですよ。純粋であることはすなわち、ラディカルでエクストリームである、ということなのだから。
…と言いたいところだが、うーんどうかな。まあとにかく、グロテスクで奇妙で不条理な話ばかりであることは間違いない。いいんじゃないかそれで。理屈抜きに「変な話」ってことで。そうやって日常性の縁を飛び越えるのだ。「啓示とは日常性の縁を飛び越えること」って「海辺のカフカ」でカーネル・サンダースも言ってたし。