野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

他人のことをアホやというやつがアホなんや

今の日本は、なんだか取り返しのつかない方向へ進んで行っているように感じられる。
そういう、どうもよろしくない状況となっていることの根っこに何があるのか、ということを説明するのに、「反知性主義」というキーワードが使われることがある。
反知性主義」というのは、決して「頭が悪い」という意味ではない。学校のお勉強がよくできる人だって思いっきり反知性主義者だったりする。じゃあいったいどういうことなのよ、と詰め寄られると答えに詰まるが、なんとなく、頭の使い方が間違っている、ということなんじゃないかと思う。いや、反知性主義であれ知性主義であれ、本来はニュートラルなものであって、良いとか悪いとか正しいとか間違っているとかいうことは無いのかもしれない。でも、いま世の中に蔓延している、どうにも気の滅入るアレコレというのが、反知性主義から湧いて出てきたものだとすると、それはやはり相当に邪悪なものではないかと思えて仕方がないのだな。
さてこの「反知性主義」について、各方面の論客(?)がアレコレ語る「日本の反知性主義」。これが本当に各方面にわたるので、それぞれのセクションでの落差が実に大きい。白井聡さんはつい先日SIGHTで初めて読んだのだが、そのソリッドでロジカルな文章は、決して読みやすいとは言えない。しかし、注意深く追っていけば論理は平明で密度が高く、実に読み応えがある。その直後に来る、高橋源一郎さんの思い切りコロキアルで一見ユルいなかに、ところどころめちゃくちゃ鋭い何かが潜んでいるテクストというのもまた、たまらない魅力がある。
どんな本だった?と聞かれると、実はうまく説明できない。けど、とても面白い本だ。しかし内田せんせも書いているように、こんな本が売れる世の中なんてのは、あんまり良いもんじゃない気がするよなー確かに。