- 作者: 中島らも
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/10/10
- メディア: Kindle版
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大ヒット作を書いたことのある元小説家の老人・小歩危ルカは、印税で新宿のホテルに暮らし、ギターを担いであちこちを徘徊している。このギターの名前が「ロカ」だ。ふらっと入ったライブハウスに出演していたロックミュージシャンでジャンキーの若者と友達になったり、テレビに出演して放送自粛用語を撒き散らして大騒ぎになったり、寺の住職に喧嘩をふっかけたり、蕎麦屋の店主に説教したり… となんだか色んなものがごた混ぜで、いったいこれをどうやって収拾つけるのか、と思っているうちに物語は終わってしまう。おそらく、本当はもっともっと長い物語になるはずだったのに、途中でらもさんが亡くなってしまったということのようだ。
作中で、ルカ老人は色んなものに対して文句を言っているが、それは腹を立てているというより、うんざりし、倦んでしまっているという感じだ。ルカ老人はおそらくらもさん自身で、多分にらもさんの思いを代弁させているのだろう。ルカ老人はこう語っている。
七十年近く生きてくると、いろいろと取りこぼしたままのものがある。意識的に遠ざけてきたもの、無視したままのものが数多くある。そういったものに白黒をつけていく時期が今来ているのではないか。(p.220)
らもさんも、何か予感のようなものがあったのかもしれませんなぁ。
続きを読みたくてたまらないが、今となってはそれは叶わない。まことに残念なことである。