野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

気合とアゲアゲのノリが世界を救う?

いまや斎藤環さんといえば、ヤンキー。になってしまっているのではないだろうか。本当はこの人、精神科医でひきこもりの治療が専門のはずだけど。
以前に読んだ「ヤンキー化する日本」のベースとなる先行研究で、いずれ読んでみなければと思っていた「世界が土曜の夜の夢なら」が、めでたく文庫化された。


この本は別にヤンキーをおちょくっているわけではない。ラカニアンならではの独特の視点なども取り入れつつ『ヤンキー(文化)とはいかなるものか」というのを深く掘り下げていくと、そこには思いもよらないものが現れてくるわけだ。
個人的にはヤンキー的なるものは、基本的にはどうも好きになれない。が一方で、ヤンキー性というのは日本人の中に深く埋め込まれた何かから出てくるのかもしれない。丸山眞男の研究を引き合いに出し、古事記にある「つぎつぎになりゆくいきほひ」がすなわち日本文化の古層にある歴史的オプティミズムであると彼が指摘している、という。これがすなわち、「気合とアゲアゲのノリさえあれば、まあなんとかなるべ」ということであると。ほんまかいな、と思うが、なかなか面白い。だからまあ、我々日本人にはやはりヤンキー的なものから離れられないのかもしれない。この本ではヤンキーについて良いとも悪いとも言わない。ただ、ヤンキーというのは「生存戦略として優れている」と言っている。なるほど。けどね、それはあくまで個体としての生存戦略であって、ある規模以上の共同体のリーダーとしてはちょっとばかし問題があったりもするんじゃないのかな。とくにそれが国家レベルになった場合に、気合とアゲアゲのノリだけでやられたら、そりゃもうたまったもんじゃないですよ実際のところ。
てなわけで、やっぱりヤンキーは勘弁してください。