昨年の暮れから年明けにかけて、『お友だちからお願いします』をちびちびと読んでいた。年末年始ぐらい、もうちょっと賢そうだったり格調高いものを読んだらどうか、と思わんでもないが、まあレイシストのヘイト本よりはマシってもんでしょう。
- 作者: 三浦しをん
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2018/11/10
- メディア: 文庫
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「旅をするホタルイカ」で、ホタルイカの干物を軽くあぶって食べると滅法うまい、と書いている。まったくその通りだ。わたくしも強く同意する。いわく、
しっかりした外皮の歯ごたえと、塩辛的にねっちりした内臓部分の味わいとが、(なにしろ小さいので)一噛みで口内に広がる。干からびたとはいえ、磯の香りもちゃんと残っている。ツマミにするとおそろしいほど酒が進み、困ってしまうぐらいだ。(p.191)
なるほど、上手いこと書くものだ。さすが小説家は違う。しかし話はここで終わらない。ホタルイカといえば富山、しかし小田原でもたまに捕れるホタルイカはいったいどこから来たのか。日本海側のホタルイカがやって来たのか、別の群なのか。ってそんなこと気にしたことがないですよわたくし。想像はさらに進み、本州を挟んで日本海と太平洋の沿岸で発光するホタルイカ。もし彼らが日本海から津軽海峡あるいは関門海峡を回って太平洋側までやって来るのだとしたら、そのルートに沿って本州を囲むような光の帯ができるのではないか、なんてことまで考え出す。すごいな。これぞ小説家の想像力というべきか。そして、
旅を終えてたどりついたとき。人間の腹のなかで、また思う存分光れ、ホタルイカ。(p.192)
いや、さすがにそれは光らんでしょ。