野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

焼きおにぎりに凝りすぎとちゃうの?

居酒屋などで出てくる料理を家で作ってみても、どうも店で食べたような感じにならない、というのは良くあることだ。
食材、設備、調理の技術など、家庭で作る場合と異なる要素は様々あるわけで、同じようにできない、というのはまあ言ってみれば当然のことだろう。
そこをあえて、一般人が入手可能な食材と普通の家庭ならば備えているであろう設備や器具を用い、調理の条件と手順を最適化することによって「店の味」を出すことに挑んだ。
これが『家飲みを極める』という本の試みである。

家飲みを極める (NHK出版新書)

家飲みを極める (NHK出版新書)

凝った料理はほとんど出てこない。枝豆、オニオンスライス、お浸し、刺身、だし巻き玉子… 等、ごく普通の料理ばかりである。
しかしながら、そのアプローチはとことん科学的だ。それぞれの料理について評価指標を明確化し(揚げジャガのホクホク感、だし巻き玉子のふわとろ感、オニオンスライスのシャキシャキ感と辛み、など)、調理において変動しうる因子を洗い出し、仕上がりに影響を与えそうなパラメータとそのメカニズムについての仮説を立て、無数のパターンの試作と検証(味見)を繰り返してベストなレシピを見つけ出している。
その、ほとんど狂気すら感じさせられる探究姿勢にはとにかく感心する。

けどもまあ、自分ではやらないな多分。面倒だし。
「お前は本当に美味い枝豆を食べたことが無いからそんなことを言うのだ!」
と糾弾されるのなら、それを認めるに吝かではない。
けどまあ、冷凍の枝豆をペペロンチーノなんかにしてもけっこう美味いでっせ。
スーパーで買った白身魚の刺身(柵で買うべし)は塩と薬味で食べる、ってのはちょっとやってみようかなと思うけど。

あ、ポテトサラダの出来は居酒屋の良し悪しを判定するためのリトマス試験紙のような存在である(これは麒麟の川島氏の意見だそうだが)っていうのは、わたくしも100%同意する。

そんな感じで、大変に楽しい本でございました。