昨年『ヘイ・ジュード』を読んで、「やっぱり一作目の『東京バンドワゴン』も読んどいた方が良いかな…」と思ってから、もう一年経つのか。
文庫での最新刊『アンド・アイ・ラブ・ハー』が出てしまった。
- 作者:小路 幸也
- 発売日: 2021/04/20
- メディア: 文庫
とにかく、種々のフォーマットもテイストもきっちりと維持したままで、話はゆるりと進んで行き、その中でちゃんと十数年の時間が経過している。何十年経とうが誰一人として歳を取らない磯野家の人々とは違うのだ。
にもかかわらず、どこかリアリティを感じられないのはなぜなのか。
それはたぶん、堀田家のエートスというのが、昔ながらの家父長制そのまま、のように見えながら実は、登場人物(特に勘一と我南人)の言動にパターナリズムがまったく感じられないところじゃないかな、と思う。
日本の典型的な直系家族構造に基づく暮らしにともなうはずの息苦しさ、面倒さを上手い具合に排除していて、悪く言えばちょっと都合良すぎるんじゃないの、という感じがしつつも、まあ面白いんだから良いじゃないの別に、と思うのだ。
そんな話あるか?というような複雑な家庭事情と登場人物たちの設定によって、もうそんなのどうでも良いよね、という気分にさせられるのだな、きっと。LOVEだねえぇ。