野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

茨木市郡は5丁目までしかありません

『疫病神』シリーズの一作目の次に、続編のつもりで『螻蛄』を読んだら、途中がだいぶ飛んでいることに気付き、しまった次はちゃんとシリーズ二作目の『国境』を読もう。と思っていたはずなのに、『国境』と『暗礁』を飛ばして『破門』に手を出してしまった。

別に順番通りに読まなくても大丈夫なように作られているのだけど何となく、ね。作中で桑原と二宮が北朝鮮に行ったエピソード(『国境』での話ですね)にも触れられていたりして、そういう時にちょっと疎外感を覚えるというか。
まあそんなのは細かいことで。
経済ヤクザの桑原が持ち込んでくる仕事は一見ボロ儲けできそうに見えて、だいたいろくでもない事に巻き込まれるのはわかっているので受けたくない、というかもう桑原とは縁を切りたい、と建設コンサルタントの二宮は思うのだけども、様々な事情によりそういうわけにいかない。
もっともそう簡単に仕事を断ったり縁を切られたりしてしまうと、話が成り立たなくなるのだけど。
二宮がなかなか桑原と縁を切れない「様々な事情」のほとんどは、二宮本人の自業自得だったりする。小金が入ればすぐに蕩尽してしまうし、負けるとわかっているパチンコを決してやめないし。
単なるヘタレで自堕落な男なのかと思うと、妙に口が上手かったり修羅場で腹が据わっていたり。そしてとにかく打たれ強い。
そういうところが実はずいぶんハードボイルドなのですね。
今回は、映画を撮る話を持ちかけて出資金を集めたままトンズラしたプロデューサー・小清水を探し出して追い込みかける、という話。
大阪や奈良、今治どころか香港やらマカオまで、不動産屋を締め上げたり不良警官を抱き込んだりとあらゆる手段を使って、執拗に小清水の消息を追って行く様子は、なんだか『母をたずねて三千里』を連想した。がんばれマルコ。
その道中には別のスジもんまで関わってきて、ずいぶん話はややこしいのだが、ヤクザの生態であるとか組織の論理みたいなものもあちこちに出てきて、へーそういうもんですか、勉強になります、という感じ。
まあそんな知識が役に立つことはないと思うけど。というかそんなもんが役に立つような状況というのは、あまり芳しいものではないだろうな。
次こそはちゃんと『国境』を読もう。上下巻に分かれてるから気合い入れてかからんとね。