野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

斉藤君とはなちゃんの間

最近の北大路ケメ子先生は、飼い猫を文字通り猫可愛がりしている様をTwitterで垂れ流していらっしゃるのだが、5〜6年ほど前までは「猫さえいればなあ」と猫の不在についてたびたび嘆いておられた。
そんなに猫飼いたかったら飼うたらええやんけ、とわたくしなどは思ってしまうのだが、ご両親のお世話など、まあ何かと事情もあって、そういうわけにもいかない、というようなことであったらしい。
その代わりに。ということで、シイタケの栽培を始めたと。
いや、なんで?
と思うが、そこはさすがケメ子先生、椎茸を育て、それを食べる。というだけのどうでもよい話を、実にスリリングかつエキサイティングな体験記(それはちょっと言い過ぎか)に仕立て上げておられる。

猫の代わりに育てる植物(なぜかすべて植物なのだ)は、舞茸、スプラウト、ヒヤシンスとどんどんエスカレート(?)していく。
そして椎茸はけめたけ、舞茸はきせのさこ、と名付けられている。6種類のスプラウトはそれぞれ「われ松」(かいわれ)、「から松」(マスタード)、「まめ松」(豆苗)、「つる松」(そばの芽)…等々。3株あるヒヤシンスはそれぞれ「ユメメ」「ピリリ」「カーたん」と名付けられ、「キタシンス」というアイドルユニットとして育てられるのだそうである。秀逸としか言いようのないネーミングセンスである。
いずれの植物(いや椎茸と舞茸は菌類か)も上記のような名前を付けられて擬人化され、それぞれの成長の様子は、ケメ子先生の比類なき妄想力によってドラマチックにして収拾のつかないストーリーとして展開されていく。面白すぎる。
ちなみにこの本、タイトルは『ロスねこ日記』であるが、生きた猫は一切登場しない。まるで落語の「らくだ」である。植物(と菌類)を育てる物語により、猫の不在について語るのだ。
それにしても、舞茸だけは市販のものを買ってきた方がよさそうだ。