野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

甘いけど冷たいなんて上手いこと言うよね

スガシカオの「ぬれた靴」という曲がある。こんな歌詞だ。

なれないスーツと ひどいドシャ降りで
なんだか疲れきってしまった

式の帰り道で 誰かがいい出して
うすぐらい中華屋にはいった

『ばにらさま』の最後に収録されている「子供おばさん」を読んでいたら、なんとなくこの曲を思い出した。
話の中では別に土砂降りではないし、入った店も中華屋ではなく喫茶店だけども。

この本もその作者についても、何も知らなかった。ある日突然、ぽんとおすすめに出てきたので、なんとなくKindleで買ってしまったのだった。
全6編の短編集。とりあえず最初の表題作「ばにらさま」でやられて、そのままずるずると読み進めた。
続く「私は大丈夫」、「菓子苑」もすごい。周囲の人と穏当な関係を保つことについて問題を抱えている人たちが、次から次へと出てくる。ホラー小説ではないはずなのに、何ともいえないホラー風味に背筋が凍る。物語の途中に仕掛けられたトリガーで、時系列を揃えたり、登場人物の関係性を見直して驚愕する。
後半3編は一見普通だけど、どこか現実から遊離したような、またちょっと違ったテイストかな。
何だかよくわからないけど衝撃的だった。これちょっと中毒性があるな。