野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

みんな死んじまっただ

先週鹿児島に出張した折に、赤兎馬を飲んだ。いやー美味いよね赤兎馬
さて、『泣き虫弱虫諸葛孔明 第四部』文庫版、やっと出た。何年待ったことか。マクラ(?)は赤兎馬の蔵元のサンゴクシシャン疑惑だ。ちなみに赤兎馬は焼酎だが、臥龍梅という日本酒がある。これまたなかなか結構なのだが、なぜか「がりゅうばい」と読むようだ。臥龍鳳雛臥龍は「がりょう」やねんからそれは「がりょうばい」と読むんちゃうか、とこの酒を注文する度にもやもやする。

泣き虫弱虫諸葛孔明 第四部 (文春文庫)
 

まあとにかく、臥龍こと諸葛亮孔明と並び称される名軍師・鳳雛すなわち龐統、字は士元が大活躍するのがこの第四部だ。
赤壁の戦いの後、トンビが油揚げをさらうように荊州を掠め取り、そのまま居座ってしまった劉備一味が、さらに益州を騙し取る。一方では曹丕がついに皇帝を名乗り始め、それじゃあ、てんで劉備孫権も「オレ皇帝な」なんて言い出したもんだから皇帝だらけ、これがほんとの三国時代てなわけだ。
劉璋が暗愚なのにつけ込んで益州を獲りにいく、という事実はどうしたって変わるわけではないのに、肝心なところで劉備が妙にええカッコするものだから話は必要以上にややこしくなって龐統は随分と苦労させられ、劉備軍団のリソースは浪費させられる。ほんと難儀なオッサン。そんな中で劉璋を降伏させ無血開城に持ち込んだ決め手は簡雍のエロトークであった、なんてそんなアホなと思うが、一方で意外とそんなもんだったのかもしれん、という気にさせられる。そのあたりがまたこのシリーズの面白いところ。
荊州を借りパチしながら益州も獲るという厚かましさで孫権を怒らせ、そうこうするうちにこのところちょっと図に乗っていた関羽は戦死する。諸葛亮に乗せられて皇帝を僭称する劉備はそれに激怒して孫権絶対ブッ殺す!と無茶な東征を決行するが、張飛は鼻息荒すぎて周囲がついて行けなくなり寝首を掻かれる。そして孫権憎しの思いだけでロクな軍略もなしに兵を動かす劉備は、数で劣る呉の陸遜の軍に殲滅させられる。そして命からがら逃げ込んだ白帝城にしばらく引きこもるが、そのまま生きる気力をなくして死亡。一方で曹操も病死。たぶん脳梗塞じゃないかな。
というわけで第四部はまた、三国志の人気キャラがほぼいなくなってしまうというお話でもある。だから「孔明、大いに泣く」なのだ。
次の第五部でいよいよ完結編。劉備が無茶な東征をしたせいで有能な人物があらかた戦死してしまい、作者曰く「カスしか残っていない」蜀の丞相となった諸葛亮孔明、この話にどうやって落とし前をつけるのだ。