野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

Pipin@ってぇのもあった

クラウドコンピューティングなる言葉を目にすることの多い昨今。だいたいああいうことよね、とわかったようなつもりではいるが、その実なんのことだかわかっちゃいない。だから読んでみた、「クラウド化する世界」。

クラウド化する世界

クラウド化する世界


そう長くはない計算機の歴史において演算処理の主体は、何年かの周期で、エンドユーザの手許とどこかで集中管理された巨大なコンピュータの間を行ったり来たりしている。あれは今から10年ほども前だったろうか、オラクルはNC=ネットワーク・コンピュータなるコンセプトで、今でいうところのシンクライアントみたいなものを$500で売り出した。が、時代を先取りしすぎたのだろう。それなりに話題にはなったが、実際にそれを使っているという事例は聞いたことが無い。
さて、価格は$500程度でも、今どきのコンピュータなんてのは当時と比べて性能が軽く1ケタは違うだろう。そんな時代でも、あえてローカルではなく、ここではないどこかにあるコンピュータを使ってデータを処理し、保存し、交換するのがだんだんと普通になってきた。これは昔のクライアント・サーバと似ているようだが、実は本質的なところで何かが違うようだ。
この本を読んでも、クラウドコンピューティングの技術的なことはあまりわからない。それは多分、その手の他の本をあたった方が良いだろう。だけどこの本にはもっと大切なことが書かれているんじゃないだろうか。
インターネットが自由や自律の象徴だと思っていたのは幻想だったのか。検索やデータマイニングの技術の発達は、実は大企業や国家権力にコントロールを与えることになるようだ。
また我々は、GoogleやAmazonが提供する豊富なリソースを無料で利用し、その便利さを享受している、と思っている。でも実は我々の日常におけるささやかな知的活動の成果は、気付かないうちに彼らに収奪され続け、いつしか逆に行動様式をコントロールされることになるのか?
コンピュータが高度に発達した未来の世界においては、人間は機械に支配される奴隷のような暮らしをしている… 一昔まえのSFなんかにありがちな話だ。これが荒唐無稽な作り話ではなく、妙に現実味を帯びて見えるのは、あまりに悲観的すぎるのか?

色々と考えさせられてしまう、ちょっとショッキングな本であります。