ちょっと気になる本がある時に、それについてネットで検索してみると、結構な確率で「松岡正剛の千夜千冊」というWebサイトがヒットする。文字通り、千冊の本についての書評を掲載したサイトだ。いや実際には現時点で1290冊になっている。2000年の2月から始まり、2004年の7月に千冊に達したようだ。年間200冊以上のペース。それもすべて著者が異なるというのだから恐れ入る。何よりも、その書評というのが、崩壊するなんたら、とかいうタワゴトをだらだらと綴ったブログとは違って、毎回非常に読み応えのある内容でかつ相当なボリュームで書かれているというのが驚異的だ。
その松岡氏の「花鳥風月の科学」という本を読んだ。この人の本を読むのは初めてだ。
- 作者: 松岡正剛
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2004/06
- メディア: 文庫
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日本の文化を山、道、神、風、鳥、花、仏、時、夢、そして月という10のキーワードに基づいて読み解く。タイトルも良いが、内容もとてつもなく面白い。伝統的な風習から日常的に使われているちょっとした言葉まで、そのルーツを上記のキーワードにからめて探って行く。そこら中に「へぇえ」という話が満載。部族・民族のアイデンティティである文字や言葉、喋り方や遊び方のふるまい、といった様式を、征服者は必ず自分たちのそれに従わせようとする。支配される者たちはこれに逆らって自分たちの様式を密かに後世に伝えようとするため、一部の様式は象徴化され、暗号化されて祝詞や歌枕になった。昔話や民話の構造を注意深く探って行くと、これらの失われた「プロトコルとパスワード」を探索していくことができる、という。こういう本は読んでてわくわくする。
といっても内容的にはかなり高度で難解な部分も含む。今回全体を読み通したが、理解できないところも多々ある。手許に置いて、折に触れて1章ずつぐらいを読みたい本。