駆け出しの落語家が、ある日突然思い立ってボクシングを始める。
「ファイティング寿限無」っていうのは、そんな話だ。ちょっと前に書店で見かけて、なんか面白そう、と思いながらほったらかしにしていた。
- 作者: 立川談四楼
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/08/10
- メディア: 文庫
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まあ、読みながらなんとなくストーリーは予想できる。けど、面白いぞ。泣かせるぞ。書いたのが本職の落語家、立川談四楼ってんだからすごいやね。登場人物のセリフが、すでに落語になっている。そして、ボクシングの試合のシーンはすごくリアル。ボクサー視点での、周囲の色んなものの見え方や聞こえ方、そして考えること、ていうあたりがね。といってもボクシングなんてやったこと無いからリアルなのかどうかわからんけど、そんな気がするのだ。
それにしても、素人が突然なにかを初めて、だんだんとスゴいことになっていく… て、こないだの「風が強く吹いている」と一緒やんけ!どんだけそんな話が好きやねん俺様。
まあそれは良いとして。この話でもう一つ大事な要素というのは、「師匠」だ。主人公は落語家だから、師匠がいる。もともと落語が死ぬほど好きで、そしてとことん惚れ込んだ噺家がいて、学校もやめて弟子入りした、という師匠だ。この「弟子」と「師匠」の関係性の物語、実はこれまた先日読んだウチダ先生の「先生はえらい」に書かれていることそのままなのだと思う。あの本を読んで、はあそういうもんですか、と思ったことが、なるほどこういうことなのか!と納得できる。共感を覚える、というところまで行くのはちょっと難しいかもしれない。それは、何かひとつのことに対して強烈にコミットした経験を持つ人のみが持てる感覚じゃないかな、と思っている。残念ながらヘタレな半端モンの俺様は、そこまでの境地には達していないのだ。それでも、ああ、そんな感じなんだろうなあ、と思うことはできるのだ。