京都の人間が「先の戦争」と言ったら、それは第二次世界大戦のことではなく応仁の乱のことである。という、ネタだかなんなんだかよくわからん話を聞いたことがある。でも「そんなわけないやろが」と一蹴してしまえないところが京都(と京都人)の恐ろしいところでもある。京都っていうのはやっぱり、日本のなかでもかなり特殊な都市なんじゃないか。
そんな京都に魅せられて、取り憑かれたように通いつめてしまう人々が世の中にはいるようだ。そんな酒井順子さんが「都と京」で京都を語る。
- 作者: 酒井順子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/02
- メディア: 文庫
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しかしこの人、東京に住んでいながら京都のことを良く知ってるなあ。最近はほぼ毎週のように京都(と言っても四条河原町かいわい限定だけど)に行っているこのわたくしよりも、よっぽど詳しいよ。単に京都のガイドブックとして読んでも、結構使えるんでないの?
ちょっとこじつけっぽかったり、どうも無理があるところが無いではないが、それでも京都という街とその文化について、東京およびその他の都市と対比しながら、かなり鋭い考察が繰り広げられる。なかなか面白い。よーく読むと、実はこの人ちょっとアカンひとなんじゃないかと思われるところが散見されるのがまた味わい深い。
そして素晴らしいのが、文庫版についている、佐藤優氏による解説だ。この人はやっぱりスゴい。いきなり旧約聖書の一節を引用してくる。そして、贈答に関して論じた一節について、マルクスを持ち出して評する。だいたい、そんな調子だ。この解説で、本の値打ちが2割増ぐらいにはなっているのではないか。
いやもちろん、もとの本自体も素晴らしいですよ酒井さん。