どこかから貰ったお歳暮が、実は自分が他の人に贈ったお歳暮を流用したものだった。そもそも自分が贈ったお歳暮も、他の誰かから貰ったお歳暮を横流ししただけのものだった。
というような話が、たしかサザエさんだかなんだかにあったような気がする。しかし実はこんな話は、中世の日本においてはごく普通にあったんだそうで。とにかく年がら年中なんやかやの贈答をしまくっていて、しかもそのやり方にはとても厳密なルールがあってそりゃあ大変だったんだそうだ。
- 作者: 桜井英治
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/11/24
- メディア: 新書
- 購入: 3人 クリック: 57回
- この商品を含むブログ (29件) を見る
「贈与の歴史学」なんて大層なタイトルだが、中世の日本にフォーカスし、当時の贈答に関するあれこれについて考察した本。ちょっとマニアックだが、なかなか面白い。有名なモースの贈与論なんかも引いてきているが、それよりも、中世における信用経済に関する引用文献の多さに驚いた。そんなことを研究している人々がおるんですなぁ、とちょっと感慨深いものがある。まあそれにしても当時の人々の、ドライなこと。「世知辛い世の中ですなあ」なんて別に今に始まったことじゃない。そういや最初のほうに、中世の人々をなめちゃいかん、彼らが現代の我々より純朴だったなんてことは決して無いのだ、って書いてた。レヴィ=ストロース老師と同じようなことを言ってるな、たぶん。