川上未映子さんのエッセイはいくつか読んだことがあるが、小説は読んだことがない。ということで今回読んだ「ヘヴン」が初めて読んだ小説ということだ。
- 作者: 川上未映子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/05/15
- メディア: 文庫
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同級生からの苛めに耐える14歳の「僕」に、ある日突然「わたしたちは仲間です」という手紙を渡す同級生の「コジマ」。彼女も「僕」と同様に同級生から苛めを受けている。その「僕」と「コジマ」の不思議な交流、というようなお話なわけだが。
「僕」を苛めるグループの一人、実際に手を下すことは無くて常に遠巻きに見ているだけなのだけど必ずそこにいる百瀬との会話が、まあいわばおそらくこの小説のひとつのクライマックスなのだと思うけど、そこでの百瀬の問いかけはあまりにラディカルで哲学的だ。超人思想か?
全体の雰囲気はやっぱりエッセイとはずいぶん違って、ずっと端正な文体だと思う。もっともコジマの語りには、あのエッセイの文体によるグルーヴがそのまま出てきている気がするけれども。
そういえばコジマと「僕」が美術館へ行って観る画、「赤や緑に塗られたキャンバスのなかで、動物や花嫁が手をつないで踊ったり、山羊のような生きものがバイオリンをくわえていたり、燃えるような巨大な花束の下で男女が抱きあったりしていた」って、どう考えてもシャガールだわなこれ。コジマが「ヘヴン」と名付けた画って「誕生日」じゃないか。それにしても、けっきょく最後までコジマってなんだかよくわからない女の子だったなあ。