「芥川賞作家が渾身で描く、究極の恋愛」という惹句が帯に書かれている『すべて真夜中の恋人たち』を読んでみた。
- 作者: 川上未映子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/10/15
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (12件) を見る
人と関わるのがあまり得意ではなく、勤め先もやめて自宅でフリーの校閲の仕事をしている主人公の冬子さんが、三束さんという冴えないおじさんに出会って… という話で、うん、これは確かに渾身の恋愛小説だな、とは思う。けど、冬子さんもともと酒を飲めなかったはずなのに、なんで急にコンビニでビールと日本酒を買っては飲むようになり、しかも場合によっては朝からビール、三束さんと喫茶店で会う前に景気付けかなんか知らんがプシュっといってたりなんかして、その辺りがどうにも気になって仕方がなかった。
三束さんはグレン・グールドが好きなのだけど、「年をとるにつれて、ききたいと思える頻度は減ってきた」のだそうだ。そんな三束さんのオススメは、グールドがほとんど弾くことのなかったショパンで、「子守歌」だという。なにそれ聴いたことないぞ、と思ったらBerceuse, Op. 57だった。何ださんざん聴いてるじゃないか、それもルービンシュタインとポリーニの両方で。
などなど、どうも本筋とあまり関係のないところがあれこれ気になってしまって、でも決してつまらない話ということでは全くなくて、いやむしろけっこう一所懸命に読んだと思う。まさに、帯に書かれている表現をパクれば、「美しい表現で紡がれた、繊細な物語」だ。何で周辺のどうでも良いあれこれがこんなに気になるんだろう、と不思議で仕方がないのであった。