野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

未映子ワンダー

レイさんにお借りした「世界クッキー」を読んでみる。河上未映子さんのエッセイである。

世界クッキー (文春文庫)

世界クッキー (文春文庫)

相変わらず、この人の文章はなんだかすごいな。センテンスが長い。けど何かの勢いに乗せられて、読めてしまう。そして、エッセイなのだけど穂村弘さんいうところのワンダー(驚嘆)/シンパシー(共感)の軸で見れば明らかにワンダー系。「わあ! と叫んでねぎなどをみじん切りにしてしまいたくなるようなそんな小さな衝動」(p.107「写真で固定」)って何だそりゃ。いやまぁ、なんとなくわかるけど。
「境目が気になって」なんかを読むと、なんだか哲学者みたいなものの見方をするんですな、とも思う。じっさい永井均さんの影響というのを公言しているようだけど。とにかく独特。「喫茶店でお茶を飲みながら、あっ。このお店にいる人が全員もれなく、頭蓋骨を所有しているのだ! という当然のことにはっと気がつき、驚いて、動けなくなりました」(p.139「まいにちいきてる」)ていうのも何だか。ワンダーですな。子どもを笑わせるためにエレベータの中でぺろんとお尻を出していたら、実はモニター付きで、1階で待っている人々にがっちり見られていた、という悲惨極まりない話(「燃える顔、そして失われたお尻」)なんかはシンパシー的に笑わせるけど。やっぱりこのバランスが絶妙なんでしょうな。いやはや。