野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

BACH=14

バッハの曲というのは、なんだか論理的というか、どこか数学的な美しさがあると思う。別に何か根拠があるわけではなく、なんとなくそう思っていたのだが、実はやはりものすごく考え抜かれた緻密な計算でできあがっているらしい。「バッハの秘密」という本には、そのあたりの話がてんこ盛りで解説されている。

バッハの秘密 (平凡社新書)

バッハの秘密 (平凡社新書)


音だけではない、楽譜を見ると、その音符の列が成すヴィジュアルにも、実に様々な意味が込められているという。フラット(♭)は涙の、そしてシャープ(♯)は十字架や傷のシンボルなのだそうだ。たとえばマタイ受難曲では、第二曲の福音史家とイエスのレシタティーヴォにおいてイエスが語る"ergekreuziget werde"(十字架に架けられるであろう)の旋律にはシャープがちりばめられ、第四曲でイエスの頭に香油を注ぎかける女に対して弟子たちは憤慨し、これを「わたしの葬りの準備」と捉えてイエスが諌める部分ではフラットが目立ってくる、とか。そして、ユダが自殺する第四一曲、福音史家のレシタティーヴォと祭司長の合唱での"erhängete sich selbst"(首をつって死んだ)の音型は真ん中のA#音を下端としたV字型となり、まるでシャープのついたA音にユダの首がぶら下がっているように見える、とか。
数字についても色々ある。ロ短調ミサ曲は全部で27曲、神の象徴する数字である3の3乗である。そしてB=2, A=1, C=3, H=8とするとBACHはこれらを足して14。この数字をバッハは署名がわりに使っていて、キリエの編成は14声で、小節数は126=3×3×14、とか…
正直、ちょっとそれはこじつけじゃないのと思うところがなくもないが、でもそういうのって、面白い。
そんな調子で曲の解説をされているのだが、どうも字だけ読んでてもよくわからない。ということで実際に曲を聴きながら読むことにした。マタイ受難曲はあるのだが、ロ短調ミサ曲は持ってなかったので、この際だからわざわざCD買ってきましたよ。で、聴きながら読んでみたけど、うーんやっぱりこれってかなり聴き込んでて、かつ楽譜も眺めながらでないと、やっぱりピンと来ませんなぁ。
まとにかく、「バッハ恐るべし」ということだけはよくわかりました。