前から気になっていたのだけど、ちょっとばかし気合いが要りそうで躊躇していた「素数の音楽」。ついに手を出してみた。やはり手強く、軽く一週間以上かかってしまった。
- 作者: マーカスデュ・ソートイ,Marcus du Sautoy,冨永星
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/09/28
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (12件) を見る
百万、一千万の証拠を集めたとしても、論理的に証明が成り立たない限りは、ある定理が正しいとは認められない。逆に、現実世界で証拠を見つけられなくても、しっかりした論理を組み立てて証明ができさえすれば、その定理は真であると誰もが認める。
その数学を敬して遠ざける、あるいは蛇蝎の如く嫌う人々は無数にいる。一方ではその魅力に惹かれるあまりに、生涯を捧げてしまう人々も僅かながらいる。「数学は頭の良い人たちが操る魔術」と思えてしまうが、実は「ちょっと頭がおかしい人たち」と言った方が良い場合も多いようだ。そう、「数学者たるもの、数学の世界でくつろぐには、すこしばかりの狂気が必要だ」(pp.591-592)というわけだ。
数学の中でも特に数論、そして素数にまつわる理論は、特に人の正気を失わせる度合が大きいようで。有名なのだけどもわれわれ一般人にはなんのことやらさっぱりわからない「リーマン予想」は特に破壊力が大きく、実に多くの数学者たちの人生を狂わせてきたようだ。
この本は、そんな偉大な社会生活不適合者たちの物語が満載だ。
超難しい数学の問題についての話を、できるだけ一般人にもわかるように書いてくれている。それはありがたいが、ゼータ関数の説明で、リーマンが定義域を拡張したやり方については、「うまいことやった」ぐらいの説明しかないのはちょっと不満だな。これではなんのこっちゃわからん。どうも気になって調べてみたところ「解析接続によって拡張した」ということらしい。まあ、これを説明されたとしても、やはり難しすぎてなんのこっちゃ、だとは思うが…
それにしても 1+2+3+... = -1/12 なんて書くのは、ちょっとやりすぎというか、こけおどしっぽくてあんまり感心しないぜラマヌジャン。