野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

だからヨーロッパって一筋縄ではいかないの

「ヨーロッパものしり紀行」、いよいよ本命の<くらしとグルメ>編でございます。

ヨーロッパものしり紀行―くらしとグルメ編 (新潮文庫)

ヨーロッパものしり紀行―くらしとグルメ編 (新潮文庫)

お気楽に構えていたら、しょっぱなからヨーロッパにおける農産物の過剰生産、というようなヘヴィな問題についてカマされてちょっと鼻白む。特に酪農製品については深刻なようで、「バターの海、チーズの山」なんて言われたりするそうだけど本当に?数年前から世界的にバターの生産量不足により価格が高騰しているなんて聞くのだけど。まあこの本が書かれた時から事情が変わっているんでしょうなあ。事情が変わるといえば、ワインの栓について。「コルク栓でなく、プラスチックと金属の栓をするのは、安物のワインに限られる」(p.40)なんて書かれているけど、これもどうなの。…いや、これはやっぱりそうかも知れない。「コルク栓はワインの栓として本当にベストなのか」というのは近年激しい議論を呼んでいるイシューなのだけど、実際に(科学的に)コルク栓がベストなのかどうかは別として、やはりプラスチック栓や金属のスクリューキャップは安物なイメージがついてまわるというのも事実だ。そうなると、嗜好品であるワインなんてものはイメージが死活的に重要で、高級品であるほど(実用上のメリット・デメリットは別として)やはりスクリューキャップは採用できず、その結果として上記の言明はやはり真、ということになるわけだな。
ところで、ヨーロッパといえば、7月~9月はバカンスのシーズンであるため仕事にならないのだけど、このバカンスというやつの歴史は実はそんなに古くないのだそうだ。なんてこった。おそらく、過酷な環境のもとで資本家に収奪され続ける労働者、という長い歴史があり、階級闘争の結果勝ち取った労働者の権利は手厚く保護されねばならない、ということになったのだろうな。年がら年中ストライキばかりやっているヨーロッパ系の航空会社なんかを見ていると、ちょっと行き過ぎちゃうんかと思わないでもないのだけど。
なんだか、お気楽なテーマのはずが、シリーズ中でもっともヘヴィな内容についてあれこれと考えさせられる一冊となってしまった。
やはりね、長い歴史をもつということは、それなりにヘヴィな問題を抱え込んでいくということでもあるのだよ。なんてな。