Kindleでは珍しい中沢新一、ということで「日本文学の大地」というのを読んでみた。
- 作者: 中沢新一
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川学芸出版
- 発売日: 2015/02/23
- メディア: Kindle版
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それぞれ、最初に作品の内容についての簡単な紹介、それから解説、最後に一部の抜粋(現代語訳付き)という構成になっているのだが、とにかくこの「解説」が実にもう、よくそんなこと思いつきますねというか、中沢さんならではという感じなのだ。実はこれ、小学館の『新編日本古典文学全集』として毎月出てくる古典作品について、その解説を書いたのをまとめたものであるらしい。その時の条件というのが、「いままでの国文学の先生がたのぜったいに書かないような斬新な解説」であった、とあとがきに描かれている。なるほど。その通り、実に斬新だ。実際「こんなこと誰も言わんよなあ」と思いながら読んでいた。いや、他の誰も書きそうにないけど、一方でいかにも中沢さんの書きそうなことでもある。『万葉集』の解説で言霊について語り、古代においてはこの言霊を始めとする霊が人々の間を流動することにより世界が動いていったのだ、でもこれは現代の市場経済社会とよく似ている、なんて言い出すもんだから、それってひょっとして霊と貨幣が同じだなんて言おうとしてますか?なんて思ったらまさにその通りで、いやもうちょっと呆れるというか感心するというか。
『源氏物語』では「政治は、この国ではつねに、一種のポルノグラフィーなのである」などと断じてみたり、「『霊異記』の隠されたほんとうのテーマは、「国家」である」とか、『東海道中膝栗毛』には冒頭の部分に「弥次郎兵衛と北八が、何年か前はたがいにホモセクシャルの関係にあったと、はっきり書かれている」とか(ひょっとして本当に書いてるのかな)。また『太平記』は「どんな悲惨な出来事が、自分の目の前でくりひろげられようと、それを叙情のオブラートで包みこもうもしないで、乾いた冷静な目でじっと観察して、そのままを飾らない言葉で表現」しており、「おそろしく現代的」で「その特徴を一言で言えば、パンク」なのだそうで、戦場で人が斬ったり斬られたりのシーンについては「まるでタランティーノの映画のようはないか」なんて言ってみたり。
キリがないのでこのくらいにしておくけど、まあとにかく全編この調子で、面白いのなんのって。
それぞれの説が学術的に正しいのかどうかなんて、はっきり言ってどうでも良いと思っている。こんなぶっ飛んだ話をでっち上げられる、その発想力じたいがすごい。まあこういうのはもちろん、ベースになる膨大な知識があってのことだと思うけどね…
とりあえず『太平記』が気になるところに、Kindleストアで「私本太平記 全13巻合本完全版」というやつが99円になっているのを見つけてしまい、ずっと悩んでいるところだ。