『アースダイバー』の新作が出ているじゃござんせんか。さっそく読んでみたところ、今回は縄文期の地層がどうのこうの、という話ではなく(ちょっとだけあるけど)、「聖地」についての話だ。だから、『アースダイバー 東京の聖地』。
- 作者: 中沢新一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/12/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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1. 結界のようなものが張りめぐらされ、外の世界からの影響を制限している。
2. 自然との通路をなしている。
3. 生きた人間が活動している。
という土地であると定義づけている。上記の基準に照らせば、築地市場も明治神宮も、立派な聖地である、というわけだ。本書で取り上げられているこの二つの場所は、少し前に(いや今でも?)世間を騒がしていたことはご案内の通りである。いや正確には、世間を騒がしていたのは、これらの場所そのものではなくて、その周辺に跋扈する一群の人々であるけれども。有り体に言えば、築地市場の豊洲移転問題、そして新国立競技場建設の問題。これらに対して、思想面での理論武装をして、ちょっと変わった視点から異議申し立てを行うという試みなわけですな。
本書の内容を上記の事案に対する意見表明として見たとき、その理論的な正当性について判断できるだけの見識を、残念ながらわたくしは持ち合わせていない。けれども、例えば築地市場の歴史と時の権力との関わり合い、明治神宮が現在の有り様になるまでの経緯など、大変楽しく読むことができた。わたくしにとっては、それで十分なんである。とりあえず美味い寿司が食べたいね。「食はこの世への愛の表明」(p.126)なんですよ。