野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

Bay Booksは何だか楽しそうな書店だな

新聞にジョン・グリシャムの新作(正確には新作ではなく文庫になっただけということだが)の広告が載っていた。
うわー久しぶりだなグリシャム。何?村上春樹訳、だと… しかもタイトルは『「グレート・ギャツビー」を追え』と。

そら読んでみなあかんわな、ということで書店へ行き紙の本を買った。これはやっぱりKindleではなく紙の本で読みたい。
プリンストン大学の図書館で厳重に保管されていたスコット・フィッツジェラルドの直筆原稿が強奪された、というようなところから話が始まる。だから『「グレート・ギャツビー」を追え』なのだ。強奪された原稿は"The Great Gatzby"だけではないけど、まあなかなかアイキャッチングなタイトルではある。ひょっとして原題は"The Hunt For The Great Gatzby"なのか(『レッド・オクトーバーを追え』の原題は"The Hunt For Red October"だ)と思ったら、"Camino Island"という何とも地味なものだった。
まあそんなことはよろしい。直筆原稿を強奪した犯人グループの一部はあっさり捕まってしまう。このあたりはなんだかFBIとかCSIとかその辺の海外ドラマを思わせる展開だが、そこもわりとどうでも良くて、犯人は捕まったけども肝心の原稿がどこに行ったかわからん、というのがポイントだ。
そこで出てくるのがカミノ・アイランド。フロリダのリゾート地らしい(と思ったら架空の土地だった)。そこで書店を営むブルース・ケーブル。この書店主がなかなか胡散臭い奴で、強奪された原稿はどうもこいつのところに流れついていそうだ、と保険会社の調査員は目を付ける。で、カミノ・アイランドに逗留中の売れない女性作家マーサに大金を掴ませて潜入捜査のようなことをやらせる、と。
ちょっと今までのグリシャムの小説には無かったストーリーで、法廷でのやり取りなど一切ない。替わりに米国の出版業界の事情などが描かれていたりして、なかなか面白い。
グリシャムの小説なのに、弁護士が出てこない、というのも話題になったらしい。でも実はやっぱり弁護士は登場している。他のグリシャム作品に比べるとかなりのちょい役なので、登場したうちに入らない、ということか。さすがアメリカ人は大雑把だなおい。池井戸潤の小説に銀行員が欠かせないように、グリシャムの小説に弁護士を出さないわけにはいかんのでしょうよ。
それにしてもグリシャムの小説を村上春樹訳で読むというのも、何とも妙な感じだ。ストーリーがあまりグリシャムっぽくないのに加えて、文章があまりにも村上春樹テイストなので、いったい誰の書いた小説を読んでいるのかわからなくなってしまう。まあでもそれがまた楽しいのですよ。