野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

あんたやる気あるんかいな

久しぶりに使おうと思った腕時計が止まっていた。おそらく電池が切れたのだろう。どこか適当な店に持って行って電池交換しなければ。
と思ってから2週間ほどになる。光陰矢の如し、とはこういうことだ。
うちの近所に時計屋あったかな、と思ってGoogleマップで探したら、千里丘の駅前にあった。散歩がてら行ってみよう。

現地に行ってみたら、ああそういえば確かにあったなこんな店。しかしだいぶ寂れた感じだが大丈夫か…

中に入ってみると、店主と思われる爺さんが一人。
電池交換お願いします、と腕時計を渡した。

何分ぐらいかかる、というような案内は無かった。30分でできる、とか言われれば、じゃまた30分後に取りに来ます、てなことになるのだが、腕時計を受け取ったら、爺さんそのまま黙って作業を開始した。
ふむ、まあそんなに時間はかからんということだろう、と解釈して店の中で待つことにした。

しかしこの店内、なかなか異様である。一言でいって、相当に寂れている。あるいは、朽ちている。
一応は時計屋を名乗っているので、時計もいくつかは売られている。がしかし、それらは到底まともに商売をしようとして陳列されているようには見えない。そもそも店内のスペースの半分以上は、何やらシートが掛けられており機能していない。
その代わりと言っては何だが、タバコ(iQOS含む)が売られている。昔ながらのタバコ屋のスタイルで、店の外側からタバコを買うこともできる。ひょっとしてタバコ屋が本業なのかもしれない。少なくとも、店頭在庫の質量ともに、明らかにタバコの方が充実している。

ちなみに時計の電池交換は1000円〜、であるが、タバコを1カートン買うと800円になるらしい。

あとタバコの他には、発泡酒缶チューハイの類もいくつか置いてあった。しかしそれらは売り物ではないのかもしれない。爺さんが店内で飲むためにおいてあるのだとすると、いささか本数が多すぎるようにも見受けられるが… そもそも冷やしてないし。ひょっとすると店内のどこかに冷蔵庫があって、これから飲むための数本は常に冷やされているのかもしれないが。

時計の修理、爺さん少しばかり苦戦しているようである。まず蓋を開けるのに手こずっていた。最初は普通に開けようとして「固っ!」と言い(小さな声であったがわたくしにははっきりと聞こえた)、何やら腕時計を固定するための道具を引っ張り出してきて、なんとか開けられたようである。
そのあとも作業をしながら何やらぶつぶつ言っている。小さな部品をためつすがめつし、時計に組み込んでは首を傾げてみたり、時折「あれ?」てな声も聞こえてきたりして、不安で仕方ない。
かれこれ20分ほどもひねくり回していただろうか。驚いたことに、無事に電池交換が完了したようである。
爺さん少しばかり申し訳なさそうに「これは1,200円になります」と告げてきた。
うん、そりゃまああんだけ苦戦したら1,000円では割が合わんわな。

その後、駅の向こう側、スーパーマルヤスの上にある中古CD屋を冷やかしたのだが、その中古CD屋に上がる階段のすぐ横にある合鍵屋でも電池交換ができる事に気づいた。最初からそこに腕時計を預けて、作業している時間に中古CD屋へ行けば良かったのだ。
もっとも、それではあの不思議空間を味わうことはできないけども。