野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

一杯だけで済んだためしが無いでしょうが

書店の新刊コーナーで『もう一杯だけ飲んで帰ろう。』という本を見つけた。
タイトルだけでやられてしまい、レジに直行した。

角田光代さん、知ってます。『紙の月』を読んだ。
河野丈洋さん、ごめん知らんかった。角田さんの旦那さんですか。
GOING UNDER GROUNDも、名前だけは辛うじて聞いたことあるけど…
ぐらいな感じで。
このご夫婦が、外に飲みに行った時のことを書く、という本。
同じ時に、同じ店に行った事を、それぞれ別々に書くのだ。
取り上げられているのは「隠れた名店」みたいなのばかりではなく(もちろんそういう店も少なくないが)、大手チェーン店に行った時のことも書かれていたりする。別に居酒屋のガイド本というわけではないから、そういうのもあったりして、なかなか面白い。
お二人とも、酒も食べ物も、だいぶ好みが違う。河野さんは最初から最後までビールばっかり飲んでいる一方で、角田さんは決してビールは飲まず、ほぼいつもレモンサワーで乾杯し、それからハイボールとかワインとか。
酒は良いとしても食べるものの好みが違うのは困るのでは、と思うのだが、その辺は上手いこと落とし所を見つけ、限られた胃の容量に対して双方が満足できるように最適な注文内容を組み立てる様子に感心する。
これ、すごくよく分かるのだ。わたくしも一人で飲む時、あるいは妻と二人で飲む時、あれもこれもは食べられないので、けっこう悩む。
そして「もう一杯だけ飲んで帰ろう」と言いつつ何杯飲むねん、というあたりも、まったく他人事ではなく…
出てくる店は西荻窪、阿佐ヶ谷、吉祥寺といったあたりが多い。東京については詳しくないけど、たしかにあの辺は良い店がいろいろありそうな感じがする。ただし、この本の元になる連載がされていたのは10年ほども前のことらしく、最後に「**は閉店しました」という注記がされている店も少なくない。コロナもあったし、飲食業は厳しいよなあ… などと思ったり。