野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

さすがラスプーチン

宗教というのは、「見える世界」と「見えない世界」を結びつけるものである。
といきなりカマされた。「はじめての宗教論 右巻」である。


「見えない世界」はなにも、死後の世界ばかりではなく、「実体的ではないもの」、「数値化不能でカネに換算できないもの」なども含めての話だ。釈徹宗さんの用語を借りるなら、「外部」か。これらのことに対して現代人は論理的に思考することが苦手になってきている。だから、「宗教と名乗らない宗教」にコロっとだまされたりするのだ、と。なるほど。
第2章の「聖書の正しい読み方」なんかも面白い。なるほど、やはり「あらゆるテクストは想像的にそれが書かれたリアルタイムに身を置いて読まねばならない」のだ。
そして、聖書にはまったく正反対のことが同時に盛り込まれているというのがすごい。神学の基礎訓練には16年を要するが、それだけの訓練を経ると、聖書に基づいて森羅万象のあらゆることを神の名の下において正当化できるようになるのだそうだ。つまり、聖書のなかから都合の良い部分を抜き出して、あらゆる言説が組み立て可能であると。神学っていったい何を研究するんだろうと長らく不思議に思っていたが、そんなことやってたのか。
というような感じで、「知の怪物」佐藤氏の強靭な知性に導かれながら、あらためて「宗教」について考える、というのはなかなか興味深い。
それにしても巻末に「お勧めのブックリスト」としてばばーんいきなり50冊も並べるのには思わず苦笑した。あのね佐藤さん、研究者ならまだしも、わたしら興味本位の一般人だから、そんなヘヴィな本ばかり何十冊も並べられてもそうそう読めませんて。
ま、次は「左巻」ですな、とりあえず。