野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

日本版NSP

一般市民が、自分の身の回りで起こった奇妙だったり不思議だったりちょっと驚くような話をラジオに投稿し、それを作家のポール・オースターが朗読する。そういう、「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」というのがかつてアメリカであった。
これがずいぶんと面白いのだそうで、それじゃ日本でも一発これをやってみようか、という試みがなされた。いくつかのお題を設けて、一般市民から集められた実話の中から、内田樹高橋源一郎のお二人が、これは面白い、というのを選び出す。そうしてできたのが、「嘘みたいな本当の話」だ。

これ実は、この企画が立ち上がって物語の募集がされるているときから知っていた。なんだか面白そうだなー、いっそ自分でも応募したろか、とさえ思ったものだが、どうも適当なネタが思い当たらなくて断念したものだ。
もともとAmazonマトグロッソというウェブマガジンのコーナーだったのが本になり、そしてこの度ついに文庫化された。というわけで読んでみたら、これがまた滅法面白い。でも思ったほど「ホンマかおい」というのは無い。つまり「嘘みたいな」の度合いはさほど高くない。どうやらわたくしはそこのハードルをかなり高めに設定していたので、適当なネタを思いつけなかったようだ。
というのはまあ置いとくにしても、とにかく面白い。3、4人ぐらいで一杯飲みながら、いや実はさ、と語るちょっとしたネタ。という感じだが、これが全部で149件。これだけの数が集まると、そこにまたなんともいえない、ある種の迫力みたいなものが感じられる。読み応えがあって、数も多かったのは「あとからぞっとした話」かな。「私が会ったなかで、いちばん物忘れのはげしい人の話」は、数は少ないけど、ぷぷぷ、と面白い。「変な機械の話」は、なんかテイストが好きなのが多い。という感じで、かなり楽しめた。
これはでも、本家も読んでみたくなるなあ。新潮社とアルクから訳書が出ているとのことなので、いずれぜひに。