野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

なんでこんなタイトルなんだろう?

むかし「細雪」を読んだ時に、さんざん雅なことを書いておきながら、最後は「下痢が止まらなかった」てな話で終わっていることに驚愕したものだ。「流」においては、初っ端から中国で便意を催して崩壊寸前の掘っ立て小屋みたいなところで用を足そうとする(でも出ない)てな話から始まって、また度肝を抜かれる。いずれも本筋にはあまり関係のない話のように思えるのだが…

流


物語の舞台は台湾だ。冒頭で脱糞しようとする主人公・秋生が17歳の時、祖父が何者かに殺された。その祖父は中国の内戦から台湾に流れてきて商売をやっていたのだが、はっきり言ってかなり問題のある人物で、世間での評判もあまり芳しくない。それでも、ずいぶん祖父にかわいがってもらった秋生は、あんまり真剣に捜査をしているとは思えない警察とは別に、独自に犯人を探そうとする。ここで高校生探偵が警察を尻目に大活躍、かというとそういう話ではないのだ。そういう身内のトラブルもありつつ、兵役に行くのはイヤだし、大学受験は失敗するし、半端な不良でもやっとしながら過ごす鬱屈、というのがこの小説のベースになっている感じ。
祖父には養子を含めて子供が4人いる。血縁と仁義を重視し、物事をワイルドに解決していく様子は、台湾版ゴッドファーザーとでも言いたくなる(ビトーの子供は5人だけど)。とにかく全体にバイオレント。なんというか、何かと粗暴な時代だったのだな。
ミステリーなのか伝奇ものなのかラブコメなのかバイオレンス・アクションなのか、一言では言い表せないこのチャンポン感、そしてページをめくる(Kindleはめくれない、なんてのは野暮だから言わない)手を止められないこのドライブ感。秀逸でございますな。読み応えありざます。