野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

おばちゃんってワイルドだもんな

前から気になっていた『おばちゃんたちのいるところ』が、早くも文庫になった。よしよし。

体裁としては短編集。いずれも、幽霊とか心霊現象が出てくる。つまり、怪談なのだこれは。でもぜんぜん怖くない。ここまで怖くない怪談、知らんなあ。怖いどころか、なんだかトボけてて妙に可笑しかったり、ちょっとほのぼのしていたり、何となく勇気づけられる感じだったり。変な小説だ。
そして、バラバラの短編集だと思って読み進めていくと、実はそれぞれがどこかでつながっていたりする。キーになるのは、名前も主たる事業内容も明かされることのない会社と、そこで要職を務めていると思われる汀(てい)さんだ。そこまでと関係のない話だと思っていると、どこからともなく汀さんが現れて、全体を貫いている何か大きなものに取り込んでしまう。
この中の一編、「ひなちゃん」を読んでいて、あれ?この話どこかで聞いたような… そうだ落語の『骨つり』じゃないかこれ、と思ったらやっぱりそうで、というかこの本のすべての短編は、落語とか歌舞伎とか浄瑠璃とか何かしらそういったものをモチーフにしているのだった。ううむ気付かんかったな。というかわたくしが元ネタを知らなすぎるのだ。残念。