「ローマ人の物語」、トライアヌスからハドリアヌス、そしてアントニヌス・ピウスまでの時代について書いた巻の最後「ローマ人の物語〈26〉賢帝の世紀〈下〉 (新潮文庫)」を読み終わった。
- 作者: 塩野七生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/08
- メディア: 文庫
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単行本では1冊だけど、文庫版では上・中・下の3巻に別れている。3人の皇帝についての話なのだから、普通に考えればそれぞれの巻で一人づつになりそうなもんだけど、そうでもないんだな。上巻はトライアヌス、中巻全部と下巻の7割ほどがハドリアヌスに割かれて、アントニヌス・ピウスは下巻の残り3割だけ。治世の長さで言えば3人ともほぼ同じ20年前後、いやむしろアントニヌスがもっとも長いくらいだ。この本での記述は極端に短いが、だからといって皇帝の仕事をしてないわけじゃない。いわく、ダキアを征服してドナウ河防衛線を強化したトライアヌス、属州を視察してまわって帝国を再構築したハドリアヌスが行ったのは「改革」であり、彼らの後を継いだアントニヌスはその成果を「定着」させた。それが彼の仕事であった、と。
なんでもアントニヌス・ピウスってのは大変な人格者だったらしいが、見ようによっては、なんだかあんまり苦労もせずにおいしいとこだけ持って行った、みたいな感じもしなくもない。まあそれはそれとしても、トライアヌスやハドリアヌスみたいに派手さには欠ける、っていうのは確かにあるわな。だからどうしても、あんまり書くことがない、てなるんだろう。
ハドリアヌスなんか、帝国の隅から隅までを視察してまわったのがたたって、歳とってからは体を壊して随分と気難しくなってしまった。そのせいで元老院からは随分評判が悪く、死んでからはあやうく記録抹殺刑にまでなりかけた、ていうんだから浮かばれないよな。だけどそんなんの方が、ネタとしては面白いわけで。