例によって山川出版社の教科書、「詳説 世界史(改訂版)」をひもとくと、ローマ帝国のいわゆる五賢帝時代の終わり頃以降については、以下のように書かれている:
またローマの市民権もしだいに拡大され、3世紀はじめには帝国全土の自由民にあたえられるようになった。
しかし五賢帝最後のマルクス=アウレリウス=アントニヌス帝の治世の末ごろから帝国の政治は乱れはじめ、3世紀には各地の軍隊がかってに皇帝を立てて争う軍人皇帝の時代となった。
「ローマ人の物語」シリーズの第XII巻「迷走する帝国」は、そんな時代について書かれている。先日この巻が文庫化されたので、とりあえずその<上>を読んだ。
ローマ人の物語〈32〉迷走する帝国〈上〉 (新潮文庫 し 12-82)
- 作者: 塩野七生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/08/28
- メディア: 文庫
- クリック: 9回
- この商品を含むブログ (45件) を見る
あのカラカラテルメで有名なカラカラ帝が登場。このカラカラ帝によるアントニヌス勅令、つまり、上で引用したような帝国全土の自由民にローマ市民権をあたえるという政策は、最終的にローマ帝国が弱体化していく主要な原因となった、と塩野氏は断罪する。その見方が本当に正しいのかどうかはわからない。でも、少なくともこの本を読むかぎりにおいては「なるほどその通りだ。まったくスカタンな皇帝だよねー」という感想を持つ。恐るべし塩野七生。
そのカラカラ帝は謀殺される。この紀元3世紀において、謀殺された皇帝の多いこと。ほんの数年(1年以下ってのもいる)のサイクルでころころと皇帝が入れ替わる。謀殺でなければ病死だ。まさに乱世。さすがに現代の法治国家ニッポンにおいて謀殺はないけれどそれでも、トップが次々と交替し、帝国が迷走し凋落していく様子を見ると、やはり先行きに不安を覚えずにはいられない。