いよいよ「新源氏物語 (中) (新潮文庫)」だ。
- 作者: 田辺聖子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1984/05
- メディア: 文庫
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明石から帰ってきて調子に乗りまくりの源氏の大将、いや太政大臣か。
以前の段で張られていた伏線が色々と展開され始めて、面白くなってきた。末摘花の復活とか、玉鬘の登場とか。
でもやっぱり読んでいて楽しいのは、ちょっと抜けたところのある人々、筑前で玉鬘に求婚する「大夫の監(たいふのげん)」や、内大臣の娘を名乗る「近江の君」、そして末摘花、といったあたりが何とも言えず良い味を出しているところだ。
谷崎版と比較すると面白いのが、たとえば大夫の監の台詞は、谷崎版では
決して御遠慮には及び申さぬ。天下に眼が潰れ、足が折れていらっしゃろうとも、拙者がお世話申して直して進ぜ申す。国中の佛や神は拙者のいうことをお聴きになるのでござる
となっているのだが、これが田辺版では、
なあに。遠慮しなはりますな。どこがお悪いのか知りまッせんばってん、たとえ、眼がつぶれ、足が折れとんなってでん、俺(おる)がお世話して、直してみせますばい。国中の神仏は、いうちみりゃ、この俺が言いなりですたい。わはわはは
だって。なんぼなんでもちょっとやり過ぎちゃうんか、と思わないでもない。
近江の君についても、おそらく同様の味付けがされていると思うのだが、その部分に相当する谷崎版がいま手許に無いため比較できないのが残念だ。
さて、これからまた「蓬生」まで戻って、谷崎版の第2巻を読むところ。