絲山秋子という名前、聞いたことがあるような無いような。え、芥川賞作家でしたか。そいつあ失礼いたしました。その絲山さんの「海の仙人」、R文庫にて。
- 作者: 絲山秋子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/12
- メディア: 文庫
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この小説では、「ファンタジー」という名の神様が居候として出てくる。まるで、先日読んだ「夢をかなえるゾウ」と同じだ。だけど、ファンタジーはガネーシャ以上に頼りない。というか、神様の中でもかなり「出来が悪い」のだそうだ。そもそも何故「ファンタジー」なのか、そういことについては一切の説明がない。そして、それがなぜか妙に説得力がある。知ってる人は知っている。初対面でも、「あなたがファンタジー?」と訊ねる。このファンタジーの語り口が絶品。ガネーシャも良いけど、ファンタジーは本当に味がある。
あと、出てくる音楽が良い。その辺は村上春樹の小説を読んでいるようだ。シド・バレットを聴いて「ひどいセンスだな」とファンタジー。片桐が自分のためにかけるトム・ウェイツ。主人公の河野が弾く、バッハの無伴奏チェロ組曲、駅前でストリートミュージシャンが歌うシェリル・クロウ…
まったく、こういうしょうもないところで「これはイイ!」と思ってしまうものなのだな。へぇ、そりゃまぁあたしだけかも知れませんけどね。