内田センセの本、また読みました。今度は「ためらいの倫理学」。
- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/08
- メディア: 文庫
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何でも、ウチダ先生がWebサイト上で書きためていたもろもろのテクストを本にした、という最初の試みらしい。それぞれのボリュームも難易度も、ずいぶんばらつきがある。それでも、これらの言説において共通にあるのは、「自分の正しさを雄弁に主張することのできる知性よりも、自分の愚かさを吟味できる知性のほうが、私は好きだ」ということらしい。これはでも、なんだかすごく共感できるなあ。
この本でもっとも感銘を受けたのは「現代思想のセントバーナード犬」だろう。
人それぞれ事情なり動機ありがあるだろうが、とにかくデリダだフーコーだラカンだドゥルーズだ、というあたりの、難解極まりない言辞を弄する「ポストモダン」の思想家たちの著作をうっかり読んでしまい、深い絶望感に打ちのめされた経験というのは、そんなに珍しいものではないはずだ。内田センセいわく、
「現代思想の深い森」に踏み込み、ただ恐るべきめまいとおのれの読解能力の絶対的な不足を経験して終わったこの若く知的好奇心にあふれた世代の中には、「現代思想のPTSD」とでも言うべき心的ストレスを背負い込んだ人が少なくない
のだそうだ。俺様の場合なんぞ、その「深い森」の入り口あたりで片足をおそるおそる突っ込んでみて、それだけで「ダメだこりゃあ」とさっさとあきらめてしまったクチなのだよ。だけどこの本を読んで、勇気付けられたね。あいつらわざとわかりにくく書いてるらしい。あの手の本で、いきなり最初のほうで何だかわけのわからんことが書いてあるのは、「こっから先はこんなことばっかり書いてあるよ、その覚悟はあるの?」っていう警告なんだそうだ。それでも強引に読み進めるっていうのは、前記の警告に対して、「はい、同意します」をクリックすることに相当するんだそうで。んで、それなりに読んでる人でも結構「デリダの書いてることはさっぱりわからん」と言ってるらしい。なんじゃそら。
そういや、池田昌子さんの「考える人」にも、「ヘーゲルを読むときには、あの難解な述語に惑わされてはいけない。あれを書いた彼の思考の動きを読み取りなさい」みたいなことを書いてたな。これも似たような話なのかもしれんなあ。