野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

意味があっても

村上春樹の「意味がなければスイングはない」、ついに待望の文庫化!

意味がなければスイングはない (文春文庫)

意味がなければスイングはない (文春文庫)


あとがきに「考えてみれば、書物と音楽は、僕の人生における二つの重要なキーになった」と書かれている。人生における重要なキー、とまで言うつもりはないが、これは僕にとっても同様で、少なくとも余暇の部分の多くを占めている、と言って良いだろう。
以前、村上さんの「ポートレイト・イン・ジャズ」を読んで、この人は本当にジャズが好きなんだなと思った。僕も時々ライブやCDの感想なんぞを書いてみたりしているが、とてもこの人のように、その魅力を余すところなく伝える、というようなことはできない。そして今回は、ジャズにとどまらず、ブライアン・ウィルソンについてその思いのたけをぶちまけたかと思えば、ブルース・スプリングスティーンレイモンド・カーヴァーの共通性について論じてみたり、作曲家としてのプーランクシューベルトのピアノソナタ、ピアニストとしてのルービンシュタイン、ゼルキン、そして「ポートレイト」でもおなじみのスタン・ゲッツウィントン・マルサリス、挙句の果てにはスガシカオ、そしてウディ・ガスリー(こんな名前、知らんかった)について語る、という縦横無尽ぶり。それぞれの好みはとりあえず置いておくとしても、いやぁすごい。