「ローマ人の物語」、「キリストの勝利」の下巻を読み終わった。
- 作者: 塩野七生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/08/28
- メディア: 文庫
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上巻、中巻、下巻がそれぞれ第一部「皇帝コンスタンティウス」、第二部「皇帝ユリアヌス」、「司教アンブロシウス」に対応している。そう、第一部と第二部のタイトルにはその時期の皇帝の名前が冠されているのだが、第三部だけは、司教の名前になっている。その時期に皇帝がいなかったわけではない。皇帝はいたのだが、すでに帝国の最高権力者ではなくなっていたわけだ。では誰が一番エラいのかといえば、もちろん司教がエラいのだ。つまり、ここでとうとうローマはキリスト教の国になってしまったわけだな。
このアンブロシウスというおっさんがなかなか面白い。どうも根っからのキリスト教徒というわけではなく、成り行き上そうなった、そして司教になると色々と都合がよろしい、ということに気づいて、まあ言ってみれば「うまいころやりよった」ということのようだ。…こんな書き方したらシバかれるかな?まあええか。
さらに面白いのは、「聖人システム」だ。古来からの伝統的なギリシャ・ローマの宗教と違ってキリスト教は唯一絶対神を信じる一神教である。しかしながら、一般市民の日常生活における種々雑多なことに関しては、それぞれについてすがることのできるカジュアルな神様、守護神が必要なのである。日本の「八百万の神」みたいに。しかしそんな無闇に神様を乱発するわけにはいかない。ではどうしたかというと、「守護神」のかわりに「守護聖人」を大量生産したのだ。これで従来のギリシャ・ローマの伝統的な多神教を信じてきた人々のニーズの受け皿としたわけだ。うむ、考えよったな。
まあそんなわけで、ローマは完全にキリスト教の国になり、さらには西ローマと東ローマにあっさり分かれてしまったのだそうな。あらあら。では続きは一年後に、ごきげんよう。